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 このプロジェクトを開催する5つのまちが運営するブログです。

2007年春のある日、東京、宮城、山形、岩手、北海道でまちの音を採集する目的で有志が集まった。砂利道を踏む足音、鬼ごっこをする子供達、ラーメンをすする音、新幹線のアナウンス、いつもは気にもかけない様々な音に耳を傾け、選択し、マイクでひろっていく。
7月に全国5地域をツアーするピアノコンサート『夏の旅』ではアーティスト向井山朋子がこのまちの音を編集し、『即興曲』を中心とするピアノ音楽のパートとして編み込んで新しいシューベルトを発表します。

   ◆ 各地域の コンサート情報はこちらから ◆

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 旅に出るといつも考えることがある。
 知っている、ってなんだろうって。
 知っていたつもりだった事柄が、一瞬のうちに無効になったり、
 知らない場所の知らない人たちに妙に親しみを覚えたり。

 誰もが聴いたことのあるシューベルトの即興曲に、そこに住む人たちが
 集めた街の音のサンプルを織り込んでいく。
 それは東京から始まって、北に進む旅とともに少しずつ形を変え続ける。
 ゆっくりと、私達が「知る」まえに。
                                        向井山朋子




向井山朋子 札幌入り
2007年 07月 25日  
文・写真  梅坪 弥代 「夏の旅」 札幌スタッフ


S-Air主催、レジデント・アーティストの歓迎会に、向井山朋子がゲストで参加しました。
二人の招聘作家(アメリカ人、メキシコ人)と、ゲストである、スペインからの写真家、イタリア人アーティストと向井山朋子、さらに今年から市立大学メディア・アート学部助教授のドイツ人、多くの札幌出身のアーティストらを囲み、パーティーは盛り上がりました。

そこでパチリ。
向井山朋子 札幌入り_e0114540_0165921.jpg



札幌を離れ、京都へ旅立ち、「夏の旅」公演には来ることができない2人のヴィジュアル・アーティスト(スペイン人とメキシコ人)に、この「夏の旅」の説明を具体的に話していた時、不思議なことですが、「夏の旅」の私の印象が明確となりました。

物を作る、物を使用する作家(ヴィジュアル・アーティスト)によるインスタレーションでは、音を使用していても、それらは主に視覚を先に刺激する(ことを意図された)作品です。
訪れ見に来た人は空間の一部となり、作品の一部となるとしても、「作品」と「見る側」であって、「作家」と、「作品」と「見る人」を含めたインスタレーションにはなりません。もしかしたら、それは「作家の分身」と「見る人」であるかも。作家の分身の方が、作家本人より語ることが多いという印象です。

一方、今回の「夏の旅」では、何かエネルギーのようなものが作品(ピアニスト)からそのまま作り出され、その渦は場所、空間、人、それぞれの思い出などを巻き込みます。参加者がインスタレーションの一部となるため、一般的な演奏会のような「ピアニスト」と「聴く側」の境界線はありません。
  そして、ピアニスト本人なくしては、作品になりえない。
  しかしながら、曲中、時に主人公はピアニストとは限りません。
もしかしたらそれは、地域に実際に住む人々がワークショップで採集したまちの音を、向井山朋子がリミックスしたことにも関係しているでしょう。採集した音をCDなどで聴く場合、通常、生の音に鮮度的には勝るのは難しい。本物らしく聴こえるようにすればするほど、嘘っぽくなることもあります。それとは対比的に、「夏の旅」では、向井山朋子による生のピアノの音によって採集済みの(今年の春の)まちの音が生き生きとして聞こえます。

「夏の旅」では聴覚だけではなく、視覚も重要な要素です。会場によっては嗅覚も影響を受けているかもしれません。

ピアニストが作品の中央であるのだけれど、曲が始まると生まれるその見えない空気、気の流れは、通常のピアノコンサートで味わえない感触と余韻を残します。

あ、コンサートについて話しすぎていますね。最終公演(7月27日 札幌)がまだ終わっていないというのに。。

でも、今晩あらためて、「インスタレーション」と一言で言っても様々な方法があると実感しました。
by dahadahay | 2007-07-25 23:58 | スタッフ 彼是
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  「夏の旅」 2007 

by dahadahay
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