このプロジェクトを開催する5つのまちが運営するブログです。

2007年春のある日、東京、宮城、山形、岩手、北海道でまちの音を採集する目的で有志が集まった。砂利道を踏む足音、鬼ごっこをする子供達、ラーメンをすする音、新幹線のアナウンス、いつもは気にもかけない様々な音に耳を傾け、選択し、マイクでひろっていく。
7月に全国5地域をツアーするピアノコンサート『夏の旅』ではアーティスト向井山朋子がこのまちの音を編集し、『即興曲』を中心とするピアノ音楽のパートとして編み込んで新しいシューベルトを発表します。

   ◆ 各地域の コンサート情報はこちらから ◆

東京都 江東区 宮城県 仙台市 山形県 白鷹町 岩手県 一関市 北海道 札幌市


 旅に出るといつも考えることがある。
 知っている、ってなんだろうって。
 知っていたつもりだった事柄が、一瞬のうちに無効になったり、
 知らない場所の知らない人たちに妙に親しみを覚えたり。

 誰もが聴いたことのあるシューベルトの即興曲に、そこに住む人たちが
 集めた街の音のサンプルを織り込んでいく。
 それは東京から始まって、北に進む旅とともに少しずつ形を変え続ける。
 ゆっくりと、私達が「知る」まえに。
                                        向井山朋子




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「旅の人」
2007年 05月 20日  
文   齊藤 直子 「夏の旅」山形スタッフ


「旅の人」

山形県の県南「置賜(おきたま)」地方に、白鷹町はある。

置賜では、よそから移住してきた人のことを

「旅の人」

と呼ぶ。たとえそれが、婿入りしてきた人でも、嫁入りしてきた人でも関係ない。
私のように他の土地から来た人は、一生死ぬまで、墓に入っても
「あの人は旅の人だから」
と呼ばれる。

呼ばれる方は、その言葉をかけられるたびに、自分がよそ者であり、
その土地で生まれ育った人とは一生、本当の意味で混じり合うことが
出来ないと拒否されていることを思い知らされる。
寂しいし、悲しいけれど、この土地に住み続けるならば、
その事実を受け止めて生きていくしかない。

私は、旅の人だ。

一生、死ぬまで。死んだ後も。

しかしそう腹をくくってしまえば、逆に自分の中に新鮮な風が吹き抜けていくのを感じる。
ずっとこの土地に縛り付けられている訳ではない。
私は、旅人なのだ。
そう考えれば、この肥沃な大地を闊歩する我が足を、旅人の足として
軽やかなものに思うことが出来る。
私の目も、舌も、肌も、心も、旅人なのだ。
この素晴らしい風景を、旅人として一生楽しむことを許された者。
それが、私たち、よそから来た人なのだ。
柔らかく稜線を描き私たちを包み込む美しい山脈、どこまでも広く濃いブルーの空、
真っ赤に燃えながら山の向こうに沈んでいく夕陽、満天の星空、
緑や土の香りがする風、柔らかく流れる清らかな川、
大地のうまみをたっぷり吸い込んだ味の濃い食べ物、
そして余計な添加物がまるで加えられていないかのような暖かくやさしい地元の人々。

この土地で私を包み込む全てが、私の旅を演出してくれる、私だけの贅沢な舞台。
思いっきり、全身全霊で、楽しめばいいのだ。

一生、楽しめばいいのだ。
倒れて、死ぬまで。
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by dahadahay | 2007-05-20 21:49 | 山形県 白鷹町

岩手/東山のまち音収集
2007年 05月 15日  
文・写真   神 麻子 「夏の旅」岩手スタッフ

岩手/東山のまち音収集の様子をお知らせいたします。


東山町は、岩手県南の一関市から車で30分ほどの山間にある町です。
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今回私たちは「この町らしい音を集める」という事で、スタッフのみで音の収集を行いました。

■東山町民がオススメする場所の音
■東山に住んでいないスタッフが町を歩いて集めた音
を織り交ぜて採集。


山沿いの小さな無人駅では、2両の電車がトコトコ走り
砂鉄川が町を横切ります。
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石灰岩を砕石して肥料を作る施設としてスタートした採石場では、
宮沢賢治が晩年技師として働いたことでも知られています。
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町には建物と建物の間にひっそりとした路地が伸びています。
しんとした佇まい。
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音、音、音・・・・と思いながらあちこち歩いてみても、なかなか聞こえてこないものです。
一番耳につくのは、車の走り抜ける音。
車の音ではつまらない、と思って音を探せば探すほど、なんだか静寂に包まれていくような感じがしました。
不思議といえば不思議。

気をとり直して、少し町の外へも足を伸ばす事に。


800年の伝統を持つ東山(とうざん)和紙がずらりと並ぶ「紙すき館」
東山町には紙生里(かみあがり)という地名があり、この地が発祥と言われているそう。
今でも岩手を代表する和紙です。


上を見上げると、鉄橋。
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日本でも有数の化石のメッカとなっている幽玄洞。
県内には龍泉洞という有名な鍾乳洞がありますが、そちらよりもっと原始的な雰囲気。
暗く細く伸びる通路。幻想的な造詣の鍾乳石。
閉所恐怖症の私にとっては、ある意味、一番印象に残った場所。
上から脇から迫ってくる鍾乳石の圧倒的な存在感に押されて、一番耳につくのは自分の心臓の音。
ああ、怖かった。
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あちこち歩いて収録した音を、実際に聞いてみると、その印象の違いにびっくり。
映像から連想する音と、音から連想する映像はイコールではないのですね。
このプロジェクトに参加して、初体験が多々ありますが、これもまた然り。

さらに向井山さんのフィルターを通るとどんな風になるのか・・・


東山は砂鉄川の氾濫で大きな被害を受けたり、今ののんびりした空気からは、分からない歴史もあります。
そこで岩手からはその辺のお話も織り交ぜつつ、開催までの様子をお伝えしていきたいと思います。
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by dahadahay | 2007-05-15 03:21 | 岩手県 一関市

仙台の音採集
2007年 05月 14日  
文  吉川 由美 「夏の旅」仙台スタッフ

仙台では、4月2日からまちの音の採集を始めました。伊東豊雄氏の独創的な建築で世界的に有名な「せんだいメディアテーク」が仙台のコンサート会場。まちに開かれたかのような空間はまちの音としてシンボリック。そこで、ここで足音を録音することにしました。ひとりで、二人で、三人で・・・。オープンスクエアを歩いたり走ったりして録音する様は、まるでダンスパフォーマンスのよう。警備員さんが飛んでくるスリリングな一幕もありました。その後、私たちはそれぞれに生活のさまざまな場面で録音をすることにしました。その音の中でおもしろかったのは、人声や人の出す音。仙台のまちで生きている人たちのおしゃべりや、街角の人声の断片は、このまちで生きてきた人たちの人生のかけら。その断片から、私たちはとてつもなく長い時間や数え切れないほどたくさんの人間たちや大きな時代の流れなどを感じたのでした。
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by dahadahay | 2007-05-14 22:10 | 宮城県 仙台市

「シューベルトには神の火花が宿っている!」 
2007年 05月 13日  
e0114540_1674487.jpgAustrian composer, Franz Peter Schubert
(January 31, 1797 - November 19, 1828)

オーストリアの作曲家、フランツ・シューベルト 
(1797年1月31日 ~ 1828年11月19日)



「シューベルトには神の火花が宿っている!」 by ベートーヴェン 1

文  梅坪 弥代 「夏の旅」札幌スタッフ

31歳で他界したシューベルトだが、その作曲数は膨大である。例えば、総数595曲2 のリートや600曲弱のピアノ曲。

私見だが、今回、なぜ「シューベルトとまちの音」なのか、なぜ、「ベートーヴェンとまちの音」や「ショパンとまちの音」ではないのかという疑問、なぜ自宅で聞いているとシューベルトの曲は聞き流してしまうのか、という疑問に突き動かされてシューベルトに関する本を読み、3冊目で非常に興味深い本、村田 千尋著 「シューベルトのリート 創作と受容の諸相」と出会う。


シューベルトの音楽は、当時の標準からは“はずれていた”ようである。 
というのは、細部の具体的な描写ばかりか、登場人物の心情、情緒性まで表現したから。 細部の具体的な表現とは、ピアノで馬の蹄を巧みに表現したり、烏の不気味さと不思議さを表現したり、あたかも雲の切れ間から陽光が差し込み、水面が明るくなっていくかのような表現。例えば、<粉挽き歌曲>の“第1曲<さすらい>では、水の流れと足音を模したピアノ伴奏に乗って、同じ旋律を5回も繰り返す。3 ” “<どこへ?>と<涙の雨>では、調のゆらぎが、感情の変化を表現している。4

つまり、シューベルトは、古典的な手法を超え、リート の分野で新たな局面を開く意義を担った。

シューベルトの場合、伴奏はさらに重要な役割を担っている。 彼が描いている水音や馬の足音、嵐は、単なる情景描写に留まるのではなく、詩の情緒、その場の雰囲気や主人公の感情をも映し出し、心情描写となっているのである。例えば、<水車屋の娘>における水音や水車の音は、主人公の朗らかな気分と未来への期待を表し、<魔王>における馬の蹄と風の音は、無気味な雰囲気と子供の恐怖を反映している。

ここで重要なことは、シューベルトはその場の雰囲気や心情を、一つの固定したものとして描いているのではなく、刻々と変化するものとして捉え、足音や嵐を描写することによって、感情の変化を描き出しているということである。<若き尼>における嵐と雷は、不安とそれに打ち勝つ信仰の心を描き、<糸を紡ぐグレートヒェン>における糸車の音は幸福感と不安の入り交じった気持ちの高ぶりを描いているのである。ここに、旋律の朗誦性と伴奏の描写性が合わさり、いわゆる「情緒リート」が誕生することになる。6

シューベルトのリズムにおいても、
シューベルトが選んだリートの題材には、旅に関わるものが多い。異国への憧れと郷愁は、ともにロマン派の主要なテーマであったから、シューベルトがこのような題材を多く選んでいることも、別に驚くに値しない。当時の旅は、馬車を使うのでなければ、徒歩に頼るしかなかったわけで、シューベルトと限らず、リートの中に歩行のリズムが出てくることがしばしばある。すなわち、等拍的な「歩みのリズム」である。7

例えば、 さすらいに関わる2つの歌曲集に数多く現れ、特に<冬の旅>では、冒頭から8分音符が等拍的に連打されている。また、<巡礼><さすらい人の月によせる歌>などにもみられる。
ところがシューベルトは、もう1種類、旅や歩行を表すリズムを用いている。すなわち、強・弱・弱 (長・短・短)というダクティルスのリズムである。例えば、<草原の歌>や<別れ>D957,7では、このリズムが速いテンポで示され、軽快な歩み、快活で、元気のよい旅を表している。

一方、<さすらい人の夜の歌Ⅰ><さすらい人><さすらい人の夜の歌Ⅱ>では、遅いテンポのダクティルスによって、旅に空き、疲れ果てた様子が描かれている。旅は同時に時の歩みも意味する。<星>におけるダクティルスは、まさに時を示す利用法の好例であろう。そして、<死と乙女>における遅いテンポのダクティルスは、旅の果て、人生の終着駅としての死を表現するリズムと考えることができる。8

旋律形成において、従来のような詩の韻律に従った、平易で滑らかな旋律線に代わって、詩を『語る』ことを主眼とし、韻律に忠実であることを前提とした上で、言葉の意味内容、そこに含まれる感情、情緒の表現を目指した。朗誦的な旋律を多く用いるようになっている。。9

村田氏によると、“リートとピアノ曲との違いは、前者が生涯にわたって、ほとんど切れ目なく作曲し続けたのに対し、後者は、同じく生涯にわたって作曲していたとはいっても、何回かの特定時期に集中して作曲する傾向がみられるということであろう。10”とある。リートで、シューベルトが表現している手法は、シューベルトというフィルターを通して曲が生まれているので、多かれ少なかれ、ピアノ曲でも使われていることがあるように考える。

そして、時にシューベルトのピアノ曲はあまりに状況描写にすぐれているのではないか、と考えてしまう。シューベルトの曲CDをかけていても、何かに気をとられているうちに曲が終わってしまっていることが多い。日常多くの音に囲まれて暮らすことや、我が家にあるCDが劇的な曲ではないため、空間、空気の一部の曲、心地よい音になってしまうのか。。

もちろん、その印象はあくまでも曲、その曲をひくピアニストの解釈によるであろう。

シューベルトの演奏について、シューベルトの友人ガーヒーは、
“私の小さな太ったパートナーの純粋なよどみのない演奏、自由な解釈、ある時は繊細である時は火のようにエネルギッシュな弾き方が、私に大きな喜びを与えてくれたのです。11
と述べている。

上記で私が関心を持ったこと以上、あるいは全く別のことを、向井山朋子氏は考えているであろう。しかしながら、個人的に、「夏の旅」プロジェクトの活動を通し、シューベルトが生きた環境や、当時の音楽発展のうねりを少し感じられたことは非常によかったと思う。というわけで、今、4冊目に入っている。


追記 : 

一般的に、シューベルトはリートを思いつくがまま一気に書き上げてしまう傾向にあり、作曲にあまり悩まないことが知られている。フォーグルなどは、シューベルトの作曲法を「音楽の透視術」と呼んでおり、この考え方は、当時、かなり広く受け入れられていたように思える 。12

シューベルトは言っている。
「うん、これは詩がいいんだ。そういう場合にはすぐに気が利いた音楽が浮かんでくる。メロディが流れ出てきて、それは本当に楽しい。・・・詩が悪いと何も出てこない。それで苦しむことになるわけだし、それで出て来るのも無味乾燥な代物ばかりだ。ぼくはもういままでに随分たくさんの押しつけられた詩を突き返したよ。」13
 
チャールズ・オズボーンによると、“シューベルトは少年期、青年期と成長するにつれ、これまで以上に内向的で瞑想的な生活を送っていた。自分の外の世界に言葉を発することは稀で、ほとんど楽譜でしか自己表現しなかった14 ”  

シューベルトは居場所を転々としていたからだとしても、シューベルトの家にピアノがなかった(!!)にもかかわらず、これだけ膨大な数を短い人生の中で作りあげたことには、ただただ驚きである。 


---- footnote ------------------------
1 【シントラーの報告『回想』 377ページ以下 】 P.27, シューベルトのリート 創作と受容の諸相, 村田 千尋, 音楽之友社, 1997
2 未完成を含む
3 P.79 同上
4 P.81 同上
5 「リート(Lied)」 : ドイツの芸術歌曲。詩とピアノ伴奏が一体となって、深い情感を表現する。18世紀後半におこり、19世紀にはドイツ独自の重要な声楽の分野となった。 (msn国語辞書より)
6 P.39 同上
7 P.43
8 P.44
9 P.36-37
10 P.114
11 P.174
12 P.109
13 [A.ヒュッテンブレンナーの伝える言葉『回想』220ページ以下] P.109
14 シューベルトとウィーン Schubert and his Vienna by Charles Osborne, チャールズ・オズボーン 著 / 岡 美知子 訳, 音楽之友社, 1995
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by dahadahay | 2007-05-13 15:59 | スタッフ 彼是

時差とLanvin
2007年 05月 10日  
文  向井山 朋子

自分で言うと相当に馬鹿だが、私はおしゃれだ。
マルジェラ、ヨージ、コスチュームナショナルなど高価、かつ流行ものをきてるので、裏では、向井山には衣装のパトロンがついている、と噂している人もいるらしい。

パトロンの話は次の機会にまわすことにして、私のワードローブが豊かなのには秘密がある。ヤフーオークションだ。オペラシティで着たツモリチサトの白いロングドレスは5000円だったし、銀座、王子ホールで秋篠宮殿下を迎えて行った日蘭交流記念コンサートで着たヴィヴィアンヌ・ウエストウッドのシルクドレスは確か8000円だったと思う。
ネット上の数枚の写真だけで、試着もなしにタイトなドレスを買うのはリスクがあってかなり楽しい。

実はさきほどコンサート用に一点購入した。オークション終了時間が日本時間、朝6時3分の予定だったから,誰も参加しなてこないだろうとたかを括っていたら。明け方5時半過ぎに強敵が現れた。「これはどうしても手に入れる。」というわたしの気持ちが通じないのか、1000円ずつじりじりと打ち返してくる。30分接戦となった末、寝起きの相手方から逃げ切って下の黒のLanvinを購入。まずは門前仲町でお披露目しましょうか?

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by dahadahay | 2007-05-10 08:43 | 現在進行形の向井山朋子

■ まちの音/TOKYO音採取 報告 ■ 3
2007年 05月 07日  
まちの音/TOKYO/採集ウォーキングツアー (リレー報告 / ボンヌ→とらお「音」編集長)
「門天ホールからまちへ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――

画像編集  とらお


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by dahadahay | 2007-05-07 21:22 | 東京都 門仲

■ まちの音/TOKYO音採取 報告 ■ 2
2007年 05月 03日  
まちの音/TOKYO/採集ウォーキングツアー (リレー報告 / 黒崎→ボンヌ)
「門天ホールからまちへ」
―――――――――――――――――――――――――――――――――
文・写真  神居ボンヌ

以前からの興味もあって、東京について考えているので「東京」の「音」を採る、ということを聞いた時には頭がはてなマークで一杯になった。
「東京」だけでも難しいのに、「音」?

そう、東京は難しい。
もっと言えば「まち」っていうものはやっかいなものなんけれども、それでも「東京」というのはフクザツです。
大きなビルができた六本木も丸の内も同じ東京。
門天のある門仲天井ホールは、すみだ川をはさんだ東にある、東京。
全然違う。けど、東京。

そして「音」。

はたして門仲で撮った音が「東京」の「音」と言えるのだろうか?
そして東京の手触りを「音」で伝えられるのだろうか。

そんな疑問をいだきつつ、今回の旅の出発点、東京の門前仲町の音をとりに行きました。
それぞれ異なる録音機材(テープレコーダー、i-pod、ローランド。。。)とその場所での写真を撮ることを約束し、チームごとに場所を分けてそれぞれの音を探す、ということで一時解散。

4つのチームがそれぞれの音をとりました。
以下はそのチームのこと。
―――――――――――――――――――――――――――――――――

□ 門天ホールのお膝元、寺町門前仲町を行く「門仲チーム」

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深川不動という大きな寺で栄えた町は、江戸のかおりをかすかに漂わせながらも、まちとしてある種の猥雑さを含んでいます(でもそれは東京にも、もっと言えば日本にも言えることなのかも)
境内での音とそのまわりで発展した結果としてのパチンコ屋やらの音。。参道の出店。
下町と言う言葉が含んでいる表面的な意味以外にもいろいろなことがついてきているような気がしました。

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□ 大きな公園のある地域を行く「木場チーム」
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門仲からちょっと東へ行くと、現代美術館も近くにある「木場地域」。
このあたりは江戸時代に建築資材の材木が貯木されていた場所だから「木場」。明治時代になって、「新木場」にその機能を移してからは、マンションや公園が立ち並ぶ住宅地域として整備されている少し人工的なにおいのする、でも人はあたたかい地域です。
しかしなかなかにこの辺りは多国籍。
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例えば公園でひとつの大きな木の下で涼む家族たち。
でも、そこで話されている言葉はバラバラ。

おそらく中国系の民族タイコ?の演奏をしている家族?の一団も。
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そして下町の風景も。おじいちゃん、おばあちゃんの話し方が下町なんですね。
道ばたで、喫茶店で話す彼らの話しぶりと内容の面白さったら!
 

□ 門仲から北にある繁華街(でもちょっと下町風味)を行く「錦糸町・亀戸チーム」

先ほど、門仲あたりが猥雑だと書きましたが、いえいえ錦糸町・亀戸に比べれば。
新宿・渋谷・池袋と同じ、「副都心」として位置づけられているこの地域。でもこの町は東京でも屈指の猥雑さで混乱した独特な雰囲気を持っています。
例えば、都会の象徴、スターバックスの傍らで流れる演歌。。。
下町と都会の融合ってところでしょうか。
この日は亀戸の亀戸天神で藤まつりが開かれていて、にぎやかでした。
バスの発射音、おまつりの音。。。
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□ すみだ川沿いを行く「川チーム」
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そう、そして忘れてはならないのが川です。すみだ川。
門仲を少し行った、森下というまちから出発して、川沿いのテラスへ出て門仲方面へ南下。
海につながる潮のかおりのする川には水上バスや屋形船、モーターボートなどさまざまな船が通りすぎていきます。
それから、遠くの方で聞こえるサイレン。両側の岸に広がるビル、高速道路を行く車。
川が開けている分、音が広く響くような気がします。
川の流れる音。釣りをする子どもと観光客のおじいちゃん。。。いろんなモノやひとが流れていきます。(でもその音を録音するのはなかなか難しい)


しかも川沿いのまちは静かです。家はあるのに面を歩いている人がほとんどいません。
相撲部屋で干されてスルメのようになっているマワシ、道路で普通に干されている鰹節。。
遠くの方で聞こえる川沿いの工事の音、住宅街から少し行くと現れる工場は休日でお休み。
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静かな音を撮るのは本当にむずかしかったです。(なのであまり録音機器には入らなかった音たちです)

それから、門天の近くにあるテーマパークのような寺院。
お賽銭を入れるとしゃべり出すえんまさま。(お金を入れないと教えてくれない。しかもお願いごとにお金を入れる場所が違うのに教訓の内容はほとんど同じ)
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このキッチュなかんじが元江戸、東京なかんじです。
(京都にはこのシステムはないでしょう)
―――――――――――――――――――――――――――――――――

それぞれの採集が終わったあと、再び門天ホールに戻ってお互いの音を聞き合いました。
撮ってきた画像と音を合わせながら見るのですが、これが見てきた風景や聞いてきた音と全然違う!
これだと思って撮ってきた音がまったく入っていなかったり、自分の見てきた景色やそこにいた人の雰囲気だとかがかなり撮りたいもののファクターとして重要で、音で語ることの難しさを痛感しました。
その一方で自分が聞いていなかった「音」が入り込んでいたりして。
それはちょっとした物語を聞いているよう。
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そんなこんなで編集した音はCD-Rの形で向井山さんに届けられ、向井山さんの手によって「音楽」になるのでしょう。
これらの音が「東京」の音なのかは疑問に残る所なのですが、ほかの地域との音を比べるとまた違った思いを抱くことになるでしょうし、その時に「東京」の「音」に気づけるのかもしれません。
わたしたちの音が向井山さんの音楽にどのような形で寄り添うのか。
とてもとても楽しみです。

東京、門天はこのコンサートツアーの出発点。
そしてこのあたりはもっと昔、北へ旅立ったある芸術家の出発点でもあります。

    The monthes and days are the travelers of eternity.
    The years that come and go are also voyagers.
   (松尾芭蕉「奥の細道/The Narrow Road To OKU」 ドナルド・キーン訳)

音が私達の前に旅をして、音が旅から帰ってくる。音楽になって。
夏のはじまりのその日が待ち遠しい、そのような気持ちです。
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すみだ川を見晴らす松尾芭蕉像がある展望台の池から
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by dahadahay | 2007-05-03 21:46 | 東京都 門仲

■ まちの音/TOKYO音採取 報告 ■ 1
2007年 05月 03日  
まちの音/TOKYO/採集ウォーキングツアー (リレー報告 / 黒崎→ボンヌ)
「門天ホールからまちへ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
文・写真  黒崎 八重子 「夏の旅」東京スタッフ

夏の旅ツアーに合わせて各地で行われている音採取のワークショップ、
東京は4/30にコンサート会場の門天周辺の音を取りに行きました。
テーマは「録る・撮る・採る」。

東京下町の音は一言でいったら騒音そのもの。特化してそれをめがけて録ろうと思っても騒音の中から音を切り採ることは難しい。ではと一本道を入れば無音とでも言ってしまえるような録音機には入らない音。。。

もっと自然に素直に、慣れ親しんでいる音、聞き慣れている音、日頃聞いているであろう音に耳を傾け耳をジャンボにしてみる。「日常も究めれば、かなり日常のものとは違う様相を呈し、何か異様な刺激を人間に与えはじめる」という赤瀬川原平さんの言葉(ちょっと古いが)を思い出し採集することに。

ワークショップのはじめはダンサーの手塚夏子さんのワークショップ。
テーマは「音を観察する」。
10分間、窓を開けて、いろんな姿勢で音を聴いてみる。
音を聞くだけではなく「音」を皮膚感覚として感じてみる。
音は聞くだけでなく感じる、触れる「音」でもあるのだ。
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はたしてそのような「音」を録ることが出来るものなのだろうか?

お昼ごはん休憩をはさんでテーマごとにチーム分けをして出発。

私の相方は、昨年の門天での向井山さんのコンサートにも来てくれ、その何年か前には向井山さんのワークショップに参加したことある渡辺さん。

さぁ、まちに出よう。
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by dahadahay | 2007-05-03 21:26 | 東京都 門仲

5月3日
2007年 05月 03日  
文・写真  向井山 朋子

録音スタジオの以外の場所でレコーディングがあると、どこからかノイズが入って作業を中断せざるを得ないことが頻繁にある。
飛行機とか、鐘の音とか、原因がわかれば対策も練れるが、たまに音源不明の雑音がかすかに侵入して、録音が続けられなくなったりする。

先日のストラスブルグ現代美術館での録音の際は、初日の半分の時間が音の出何処探しで無駄になった。結局、美術館全体のアラームシステムが犯人と判り、極秘でアラーム装置を数日、停止することになった。(!)
どの名作を壁からはずしても、今日だけはアラームがならない。しかも警備員以外、そのことを誰も知らない。絶好のチャンスとあって、言うまでもなく鑑賞の真剣度が高まる。カンデンスキー、エルンストなどの巨匠が並ぶなか、私が俄然心を惹かれたのはアルマン。チャンクされた何台ものギターを積み重ねたオブジェで、どの角度から鑑賞しても説得力のある美しさがある。残念ながら重過ぎて一人では運び出せなかった、が。

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by dahadahay | 2007-05-03 08:56 | 現在進行形の向井山朋子

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