このプロジェクトを開催する5つのまちが運営するブログです。

2007年春のある日、東京、宮城、山形、岩手、北海道でまちの音を採集する目的で有志が集まった。砂利道を踏む足音、鬼ごっこをする子供達、ラーメンをすする音、新幹線のアナウンス、いつもは気にもかけない様々な音に耳を傾け、選択し、マイクでひろっていく。
7月に全国5地域をツアーするピアノコンサート『夏の旅』ではアーティスト向井山朋子がこのまちの音を編集し、『即興曲』を中心とするピアノ音楽のパートとして編み込んで新しいシューベルトを発表します。

   ◆ 各地域の コンサート情報はこちらから ◆

東京都 江東区 宮城県 仙台市 山形県 白鷹町 岩手県 一関市 北海道 札幌市


 旅に出るといつも考えることがある。
 知っている、ってなんだろうって。
 知っていたつもりだった事柄が、一瞬のうちに無効になったり、
 知らない場所の知らない人たちに妙に親しみを覚えたり。

 誰もが聴いたことのあるシューベルトの即興曲に、そこに住む人たちが
 集めた街の音のサンプルを織り込んでいく。
 それは東京から始まって、北に進む旅とともに少しずつ形を変え続ける。
 ゆっくりと、私達が「知る」まえに。
                                        向井山朋子




これまでの向井山朋子 : 2004年6月16日 岐阜県可児市
2007年 04月 13日  
6月16日(水)可児 晴れ

17家族の伝説

■ for family ~ うちのピアノ ≪コンサート編≫

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ワークショップで全体調整に入る


 岐阜県可児市周辺で行った向井山朋子の宅配コンサート「for family ~ うちのピアノ」のコンサート編が開催される。可児市文化創造センターに到着すると、向井山がひとりカフェにいた。私と向井山は、それぞれの尾鷲での夜について少し話す。それはともにたわいもないものだった。コンサートに先立ちワークショップが予定されていて、宅配コンサートで訪れた家庭の中から選ばれた、幼児から中高年の大人までの7人が集まった。ホールには、4台のグランドピアノが用意され、向井山を含めて8人が2人ずつ着席するようになっている。彼らには、宅配コンサートの時に向井山からその印象を絵でも文でもよいから描いて当日持ってくるようにという宿題がだされており、7人はそれを譜面台の上に置く。そして、一人ずつその内容をピアノで表現することになる。そういわれても、とまどってしまう参加者が多かった。向井山は、一人一人と方向性を探る。各自の弾き方が決まると、全体での調整が1時間ほど続く。成果はこの後コンサートの時に発表されるのだ。ワークショップは終わり、ひとときの静寂が訪れる。
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ワークショップで7人の参加者一人一人と調整する向井山朋子


e0114540_1454274.jpg 夕日がなだらかな丘のかなたに沈み開演となる。まず、茂木綾子による宅配コンサートの映像が流された。車で移動する向井山の姿、家族の表情、街の風景、リビングルームに置かれた一台のピアノの前に向井山が現われ、うわぶたを開け、少し話した後、シミオン・テン・ホルトの「悪魔のダンスII」(1986)を弾き始める……。すると暗いステージに向井山が現われ、ピアノの前にすわり、同じ曲を弾き始めた。映像の音とピアノの音が重なり、やがて映像の音は消え、向井山にスポットライトがあたる。こうして、コンサートは始まった。
 2曲目の野村誠作曲、向井山編曲の「AB~for family版」は、ワークショップの成果として演奏された。7人の参加者と向井山がピアノの前に着席し、曲は始まった。向井山が短いフレーズが際限なくミニマルに繰り返される主旋律をひく。参加者はそれぞれの絵や文の印象を基にした音を出す。向井山の音と参加者の音は混ざる。濃霧に閉ざされた薄暗い海の中をゆっくりと進む船に乗っているかのような印象だった。霧の中から突如、他の船が次々に現われる。参加者たちの作る音だった。こうして、向井山は宅配コンサートを自らの曲に取り込み、人々との出会いをステージの上で再現して見せた。それは、まさに私が数日前に体験した旅でもあった。
上/茂木綾子による宅配コンサートの映像の前で演奏する向井山
下/茂木の映像作品の1シーン


 後半は、4つの曲が切れ目なく一気に演奏された。サルヴァトーレ・シャリーノの「ピアノソナタ第2番」(1983)に続き、ペーター・ヤン・ワーグマンの「エデンの庭師」(2001)より第3部、ここでシューマンの「アラベスク」(1839)を少しはさみ、佐藤聰明の「化身II」(1977)、最後は再びシューマンだった。大胆に変転する壮大な1曲に編集された4つの曲は、つなげられことにより緊張感をおびる。前の曲の余韻の中からすぐさま立ち上がっていく次の曲は刹那的でもあった。特に、印象的だったのは佐藤の「化身II」である。この最新のホールは、スピーカーを使ったエフェクト効果が可能であったため、ほんの少し遅らせてスピーカーから音を出す。いわゆるディレイエフェクトをこの曲では使ったのである。ピアノの連打によるトレモロは、この処理によってホールの中に巨大な音像を形成。それは、深い谷が風で低くうなりを上げるような圧倒的な音であり、向井山はピアノで風を操る魔神のようだった。
 拍手は鳴りやまなかった。アンコールの1曲目は、ジェフスキーの「Down by the Riverside」(1978)。田中カレンのとりわけお洒落な「テクノ・エチュード」(2000)で締めくくられた。
 可児でのプロジェクトはこれで終わった。向井山のコンサートは、17家族の伝説になり、そして、向井山と17家族の話は、街の伝説になるのだと思う。

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可児文化創造センターからの眺め。




■ for family ~ うちのピアノ ≪展示編≫

宅配コンサートで回った家のピアノの履歴書が展示。
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by dahadahay | 2007-04-13 01:10 | スタッフ 彼是
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■「夏の旅」 日程■
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